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恩義は人を育てる!(2つの体験講演より)

 人は、毎日刻々と同じような道を歩いているようだが振り返ってみれば、そこには、多くの人との多くの生き合いがあるもの。助けたり助けられたりしながら人生がある。また良くも思われ、悪くも思われることさえあるものだ。果たして行き着く先は幸せな終焉となれるであろうかと思うこともある。
 人の半生記は、6歳頃の自我の芽生えから多感な時期を迎え、いじめられたり、いじめたりしながらも同じ辛(つら)さとむなしさを経験して行くものです。
 ここで紹介する人も、希望と挫折の繰り返しの中、出会った人たちに守れられたことに恩義を感じて、この恩を無駄にしないと心に誓って挑戦しその恩返しとしての栄光の人生を歩んでいる人の話です。

(その一)
 先日10日に、可児市文化創造センターでの人権講演会
「オール1の落ちこぼれ、教師になる」(市・人づくり課主催・本センター協力)で宮本延春氏の講演があった。
小学校の時いじめに遭い学校嫌いになり中学生1年生の時は、オール1の成績、3年生まで自分の名前しか書けず落ちこぼれ、中卒で見習い大工、17歳フリーター、18歳で両親と死別して天涯孤独となる。だが17歳の時今の奥様と知り合った。この人が人生の希望の女神となり力強く生きていく突破口になっていく。  
 たまたま奥さんより見せてもらったビデオから物理に興味を見いだし、定時制高校に通い、そこで恩師となる先生に出合い・また就職先で正社員になり、会社の社長に可愛がられていく。
 猛勉強のすえ名古屋大学の物理学科に合格・入学し、さらに大学院に進み、思案の末に恩ある高校の教師になった話です。天涯孤独となり食べることもままならない一人の青年が発起した時、求め抜く挑戦の渦が巻きあがり、周りの人々も感化して慈しみながらの応援心をおこしていく。
 無二に求め抜く大切さのことは、江戸初期の中江藤樹の塾生「大野了佐」を思い出した。
生まれつき愚鈍だが、医者になりたい一心で藤樹の塾に一日も休まず通い詰め、とうとう藤樹は、彼用の教科書まで作り育て、やがて「尾関友庵」と言う名医になったと言う話である。
 師との信頼の麗しい関係がそこに有ったことと宮本氏と定時制の先生・また務めた先の社長・自分の奥さんとの関係も信頼で強く結ばれていた。それも本人の湧き上がる情熱があったからこそである。
(そのニ)
 8月5日「可児市新人教諭研修会」(21名+α名)に市在住の若い講師が招かれ約1時間余講演した。彼は、中学校の時すさんだことで有名な人であった。やがて施設で育まれ、出た時の母親が涙を流して待っていてくれたことに感激して、「母に心配かけまいと」心に強く誓うのだった。
しかし、働く口がなかなか見つからなかった。母も、知り合いを当たったが中々であった。ある時近くの婦人の方に話したら、あの人にお願いしたらと言われ、懸命にお願いしたら、「力になりましょう」と言ってくれ、今の市内に有るH社に入社できたのです。仕事は綺麗な仕事ではなかったが懸命に働いた。人の嫌がることもした。仕事の同僚からは、すぐに風評がでたが、厳しく人権を大切にする社風であったので、真剣にやる姿を見た同僚の人気者となっていった。こうなった因は、時々廻って来る社主からの激励であったと言う。この度毎に、「こんな俺にも声をかけてくれる」とうれしく、今までだれ一人自分の存在を必要と認めてくれた人はいなかったからであった。自分がこの会社でなくてはならない人になれるよう頑張ろうと誓ったという。嬉しく掃除も片づけもこれでもかと言うくらい綺麗にやった。やがて同僚からも信頼され、人を纏めることは、荒れた学校時代にうまくやっていた
ノウハウが生きて、会社より班長の命をいただき、すぐに係長に昇進した。その後人当たりが良いと言うことで事務職の営業係長に抜擢され現在成果をだしているとのこと。
研修会での、講話内容では、先生にお願いと言い、特にはみ出した子どもには、思いのメモでも・声をかけでも何でもいいからやってほしい。
「先生にとりクラスは、35人であるが生徒から見ると1対1の関係である。一度いやな事が起こすと無視される感じが出てくる。なお声掛がないとますます荒れがエスカレートしていくものです。スパイラルに入るとクラスには関係ない認識が生まれ、居場所が無くなってしまうので、学校に行けなくなるのです」 との言葉は、強烈に先生達の心に刺さったようであったと研修担当の方から教えていただきました。
この2つの話で共通することは、その人をどこまで一人の人間として信頼して上げられるかであろう。人生には、人それぞれであり、すべての人が同じ人生は歩まないのである。
多くの人との出会いの中で、人として艱難な時には、手を差し伸べるゆとりを保てる普段の心がけが必要なのである。本人にとり大事なことは、恩に答えていく姿勢であろう。そのためには、最後は勝つとの負けない心を持って挑む勢いが高みの人生を創りあげるのではあるまいか。勤めの主人と導いてくれる教師と慈愛あふれる親(母)による3つの恩義(主・師・親)が、人を育ててくれるものであった。2人の体験を聴いてふとこのように思った。(y・k)