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ホーム心のビタミン

キャビネットケーキ

たまたまテレビを付けたら、料理番組が始まったばかり。
「キャビネットケーキ」初めて聞く名前。説明では、外交官のプディングと言う意味だそうだ。料理を説明しながら、料理人の方の説明が楽しい。名前を知っていても、人柄は分からないままだった。キャビネットケーキは、子どもの頃に、母親によく作ってもらっていたそうだ。両親ともに、料理研究家。

 プロの料理人の作る老舗のデザートは、富士山の頂のようなもの。富士山の裾野にだって、きれいな花が咲くでしょ!家庭の料理は、いわば富士山の裾野と同じ。
 食パン、レーズン、ミカンの缶詰、牛乳、卵、砂糖が材料。
「家に、普段からあるもので作るのが、家庭のおやつでしょう?!」
 聞き手役のアナウンサーに話しかけながら、料理は進められていく。番組を見ているこちらまで、つい頷いてしまう。我が家にも、レーズンは買い置きがある。作り方も難しくなく、すぐに作れそうな簡単な手順だった。
 あとは、盛り付けだけ。蒸した容器から出したプリンが、お皿の上で、上の部分が静かに崩れた。
「食べる時に、プリンを崩して食べるでしょ。少しぐらい崩れたって、味に変わりはないでしょ。大丈夫!」
 なんだか不思議な気分。完璧なおやつのイメージが、母の作ってくれた小麦粉のだまの入った蒸しケーキに似たものに思えてきた。
 番組が終わり、まだまだこの料理人の料理が見たくなり、YouTubeで検索してしまった。気さくな話し方、大事な点は丁寧におさえ、どうでも良いことは気にしないと言い切る。一気に、好感度が上がってしまった。

実家の母が若かった頃、梅雨で畑仕事ができないと、おやつをよく作ってくれた。小麦粉で皮を作り、空豆であんこを作り、みょうがの葉っぱで包み、蒸したもの。
「みょうがまんじゅう」と言っていた。食べ始めると、みょうがの葉っぱの筋が、小麦粉の皮にくっついて上手く取れなかったりした。蒸したてを、フウフウしながら、手が熱さで赤くなるのも気にしないで夢中で食べた。おやつの無い時期に、よほど嬉しかったのだと思う。実際に蒸したては、格段に美味しかった!

夏休みは、昼寝をした後、やかんいっぱいに、さっぱりとした飲み物を飲み、スイカを食べた。さっぱりとした飲み物が梅ジュースだと知ったのは、ずっと後だった。家で採れる梅は、虫食いもあり、丁寧に洗っていたのだと思う。
 昭和の暮らし、昭和の家庭のおやつ。私には、キャビネットケーキを食べる経験は無かったけど、母のおかげで、愛情たっぷりのおやつには恵まれた。
 おかっぱ頭の私、弟、妹、祖父、祖母、父、母。農家は、家族全員が集合。いつになくゆったりと時間が流れた。梅雨様々の一日である。(C・S)