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ホーム心のビタミン

ちょっとした言葉に

「待っている人がござるで、はよーせんと。」
場所は、病院の出入り口近く。アルコール消毒をしようとしたご夫婦のうちのご主人が奥さんに言われた言葉。次に待っていたのは、私。ソーシャルディスタンスですから、間隔を空けて待機。
(久しぶりに聞く言葉、ござるで、はよー、何だか実家の母の言い回しにそっくり!)マスクをしている私の顔が思わず笑顔になり、軽く会釈をした。
待って当たり前。それなのに気を遣ってもらうなんて。妙に、親しみが湧いた瞬間でした。

学生だった頃の私は、学校が休みとなれば、昼近くまで寝ていた。
母に、「はよー起きやあー、日が暮れてまうわ」とよく言われたものだ。
畑で会う近所の方には、「元気にしとりゃあた?」と、採れたての野菜を渡しながら、話しかけていた。
その時に感じた言葉の温かさと同じ思いを、このご主人から受け取ることができた。場所が、病院だったことも大きい。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、不要不急でない限り、病院に出入りするには、相当の勇気が必要。
しかし、人間ドックを受け、後日「要精密検査」の用紙が送付されてきた身では、早期発見、早期治療と思い、予約を入れ、CTを検査を受けることになった。

ベッドに横たわったまま、利き腕から血管に造影剤を注入され全身に回っていく。
「身体が徐々に熱くなっていきますからね」と言われ、じっとしていると、上半身から下半身へと確かに熱くなっていった、ホカホカになった段階で、いよいよCTを撮ってもらうこととなった。

このところ、「軽度の難聴」と診断されているので、「できるだけ大きな声で指示してください。」とお願いした。「大丈夫だと思います。」と言われ、じっとしていると、自動音声が流れだした。(なあんだ、胃の検査とは違うんだ。もう音声がセットされているわけか。何とか分かるし、これならOKと一人納得)

外科のけがと違い、内科の「物言わぬ臓器」と言われている部分が、ひっかかった。臓器の「要精密検査」は、郵便で手元に届いた時点から、心配やら不安が一気に押し寄せてくる。

後日、診断結果を聞くために、再度病院に向かう。検査結果は「異状なし」
重苦しい気分から、やっとやっと解放された。出口に向かうときに、偶然、出会い、気遣って下さったのがご主人だった。
こんな嬉しい病院の帰り道は、これまでなかった。(c・s)