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ホームイラストギャラリー300字小説入賞作品の挿画

お母さんの手 【令和2年度優秀賞作品】

何年か前の話のこと。
「行ってくるね。」寝ている私の頭を撫でながらお母さんが言った。

私のお母さんは朝早くから仕事に行ってしまう。忙しいにもかかわらず、お母さんは仕事に行く前に必ず私の部屋に来てくれて頭を撫でてから家を出ていく。

そんなお母さんの手はいつも温かい。
ご飯を作ってくれる時の手、手を繋いでくれる時の手、洗濯をしてくれている時の手。
いつでもどんな時も大きくて温かくて優しいお母さんの手。分厚くて、少しキズの付いたお母さんの手。

「いつもありがとう。」
私は照れくさそうに言った。
「こちらこそ産まれてきてくれてありがとう。」
お母さんみたいになれたらいいな。