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ホームイラストギャラリー300字小説入賞作品の挿画

小さい勇気が、自ら「いざの時」の大力となり守ります!(平成26年入賞作品)

よりによってどうしてここに立つんだよ。
やっと座れてうとうとしかけた時に、人の気配がしたので、ゆっくりと目を開けると、おばあさんが僕の前に立つていた。
優先席に他の学生が何人も座っているのに。

声をかけるのは少し恥ずかしいので、どうしようと悩んでいると、隣の男の人が立ち上がって席をゆずった。
ああ、先を越された。

そう思って、ふと顔を上げると、男の人が、僕に向かってにっこりと笑って言った。
「わかるよ、太一君、勇気がいるもんな。でも次はがんばれよ。」

なぜ僕の名前を――。僕のポケットには「小倉太一」と書いた身分証明書がはみ出していた。

<講評>

善いことと思って居ても、やろうと思えば、いやいやの心が、湧きあがってきます。皆同じです。周りで寝ていれば、起こしては失礼と思ったりもしてしまい、タイミングを逸してしまうこともあります。このときに、そのことと、席をゆずることの価値判断を瞬時にできるかは、性格にも関係します。常に年寄りが自分の前に来たときは、譲ってあげようと決めてあればできそうです。良いことをやるのは、習慣とすれば、すんなりとできそうです。欧米での女性優先は、社会習慣だからほとんどの人ができるのです。(y・k)